2014年9月4日木曜日

[World News #089] ペドロ・コスタ監督『Horse Money』インタビュー  『Horse Money』は、ペドロ・コスタ監督待望の長編新作だ。作品については、過去の記事を参照されたい。(*注)  主演には、『コロッサル・ユース』に引き続きVenturaを起用。ロカルノ映画祭で最優秀監督賞に選ばれ、10月7日からのニューヨーク映画祭への出品も決まっている。FilmCommentのインタビュー記事より、監督のコメントを訳出しながら、『Horse Money』の魅力と彼が巨匠と呼ばれながらインディペンデント映画監督であり続ける所以を探りたい。 ――以前「この作品を、今、好きになり始めている」と仰っていたと思いますが、監督は作品を作るときは、いつも編集もすべて終わってから徐々に好きになるのでしょうか?それともこの作品だけ?  今はもっと気に入っていますよ。特にほかの作品のカットやシーンが好きなだけで。この作品は、緊張感がうまく出ています。こうした緊張感は得られがたいのですが、Venturaの身体の持つ力ですね。彼は、私が映画に写そうと思うものそのものなんです。僕も「ここに立って」「そこを見て」と言うんだけど、セリフも、動作も、間の取り方も、結局は全部彼のものなんだ。 ――撮影当日に毎回彼ら自身にセリフを考えさせたということですが  そうです。前から変わらずこの方法をとっています。 ――撮影前には、どれくらい書くんですか?  毎日のように書いてますよ。でも、最近気づいたことなんですけど、僕の映画は、どれだけ同じダイアログを推敲したかじゃないんですよね。僕が言ってほしいことや役者が言いたいことがあるときに、それが伝わる方法をまず見つけなきゃいけないんです。Horse Moneyは、たくさんのテイクを重ねた『コロッサル・ユース』とは違うテンポで進みます。Horse Moneyも撮り直しはしたけど、それは違う理由で、です。もっと音楽的に確かなテンポを、確かな言い方を、視線を求めたからです。『コロッサル・ユース』はもっと映画的、って言えばいいかな。 ――なるほど。  こう言うと変に聞こえるかもしれないんだけど、『コロッサル・ユース』はHoney Moneyよりも、リハーサルを重ねた、純化されたものなんだ。対してHoney Moneyはすこし混沌としていて、生々しい。すこしミステリアスだとも思う。 ――これまでの作品よりも、かなりペースが速いということで。  やってみたかったことだったんです。うまくいくかどうかなんてやってみなければわからないし、考えている時間はなかった。それに、昔の映画が素晴らしいのは、ここにあるとおもったんだ。カールソンやフライシャー、ルイス・ブニュエルのような簡潔さだね。 ――ほかの記事であなたのコメントを拝見したのですが、「horseかmoneyのどちらか一つを選んで聞いてくれ」と。その時は記者がmoneyを選んで、100,000ユーロで映画を撮られた話に進んだと思うのですが、horseについて聞いたらどんな回答が聞けたのでしょう?  実はhorseを選んでもmoneyを選んでも、どっちでも同じなんですよ(笑)。どちらにせよお金の話なんです。どれくらい金がかかるか、撮った映画をどうするか、今日何をするか、有能なスタッフをだれが集めてくるか、何が必要で何が不必要か、スタッフをどうやって動かさなければならないか。映画を撮るのは何にしてもお金が必要です。馬は、お金以外の全部を指しています。僕のスタッフには、horseばかりを集めます。その人の持つすべての時間をこの作品に費やせる人です。自由で、時間があって、プロフェッショナル。だから人数は3人か4人で、それ以上には決してならないですね。スイスとかフランスとの共同制作とか、そういうのもやらないです。 ――全部ポルトガルで。 ええ。本当に小さなプロジェクトなんです。毎月の収入はスタッフみんなのものです。ほんとに何も買わないんですよ。昼ごはんも贅沢なんかしないで、みんなでサンドイッチ食べてます。 ――戦車のシーンはどうしたんですか?  軍隊に依頼したんですけど、ガソリン代を払わなきゃいけなくて(笑)。二人に運転してきてもらったのですが、渡したのは二人合わせて500ユーロなので、十分じゃなかったでしょうね。でも我々には大きな額でした。あとは全部偽物です。銃だっておもちゃですよ。  お金っていうのは本当に重要ですね。比喩でも何でもなくて、お金が映画を動かすんですから。Venturaが話すのはお金の話ばかりです。彼の年金、給料……。お金がない時ってそのことばっかり考えちゃうじゃないですか。彼はお金がないせいで婚約を解消されるのではないかとびくびくしている。彼にとっての婚約破棄は、僕にとっての映画が撮れなくなることです。僕の婚約は、映画と、それからその作品に携わるスタッフたちとのことだね。  僕の故郷では、本当にどこでも金の信用貸しが見られました。だから、映画よりクレジットの方が長いくらいなんですよ。昨日観た映画のクレジットの企業ロゴを全部数えたら、なんと700ありました。こういう金銭的な下地があって、ほかの投資を受けられるんです。映画より長いなんてちょっとばかみたいですけど、でもこういうのが今は失われているなあと思うんです。「企業ロゴで迷子になる時代」ですね、はは!これはいい。エレベーターとか物語の中で迷子になるのならいいんですけどね。 則定彩香 http://ift.tt/1ozAcYA 参考 http://ift.tt/1rMZV3f *注 三浦翔「World News #076 ペドロ・コスタ監督最新作『Horse Money』」http://ift.tt/1A8Zq2i

from inside IndieTokyo http://ift.tt/1myAn4W

via IFTTT

0 件のコメント:

コメントを投稿