2014年9月26日金曜日

Werner Herzog's Rogue Film School

[World News #102] ヴェルナー・ヘルツォーク映画術 IndieWireによるThe Rogue Film School授業レポート 「The Rogue Film Schoolは意気地がない者の来るところではない。自分の足で旅をした者、セックスクラブの用心棒や精神病院の監視員として働いていた者などが、いかなる企画に関わらず、あらゆる国で撮影許可を得るための錠破りや、偽造する方法を学ぼうとする者たちに向けられた場所である。端的に言えば:詩的なセンスを持っている者たち、旅人たち、4才の子供の注意を惹きつけながら自分の物語を語れる者たち、自分の心の中に燃える炎を宿す者たち、そして夢を抱く者たちだ。」(*1) ― ヴェルナー・ヘルツォーク ―   ヘルツォーク自らが設立した映画学校The Rogue Film School(ならず者の映画学校)は2010年から引き続き、今年で4年目を向かえる。授業は3日~4日間のセミナー形式で、開催場所と時期さえもその都度変わるという、まるでノマドのような授業スタイルを有しているユニークな映画学校である。  The Rogue Film Schoolの授業に参加するためには、まず自分の作品や経歴などを送り、ヘルツォークの審査を通った者たちのみ、参加できる仕組みとなっている。また、授業は技術的なことは一切教えず、主にヘルツォークや他の参加者との対話が中心になる。今年は8月の22日から25日にかけてロサンゼルスで行われ、5回目の授業に参加したMarie-Françoise Theodore氏が授業の詳細をIndieWireに寄せており、ヘルツォークによって教えられたことを12個の項目にリスト化している。これらの項目はあくまで個人の見解によるものだが、The Rogue Film Schoolで行われる授業の一端が垣間見られるものとなっている (*2): 1・読んで、読んで、読みまくる ヘルツォークはセミナーが始まる数週間前に長い読書リストを参加者に送りつけ、すべてに目を通すように言い付けたという。その中には詩や、ヘミングウェイからノンフィクションに至るまで、様々なジャンルに及んでいる。しかし、映画の演出論や脚本術などの本は含まれておらず、いかにストーリーを物語るのかを掴むために、多くの読書をする必要性があると指摘している。 2・早く書き上げる 「私はシナリオを書き上げるのに5日かかる」 「もし君が2週間以上もそれに費やしているのだとしたら、何かが間違っているということだ」 ヘルツォークは物語のアイディアがやってくるまで、座ってじっと待っているのではなく、頭の中にある考えを口述していき、物語を作っていく。しかし、彼に適した方法が必ずしも他者に当てはまるとは限らないと本人が悟った為、自分で方法を見出すしかないとのこと。ちなみに彼の秘訣はシナリオを執筆する4~5日前に、ウォーミングアップとして詩だけを読み漁ることらしい。 3・支払われること 「映画監督は自分の仕事を支払われる必要がある。自分のポケットマネーを絶対に使ってはならない」 例えば、予想外に膨らんだポスト・プロダクションの費用を監督が支払う必要が出てくるようなケースなどは、決してあってはならない。 4・失敗を恐れない 「私は自らの失敗による産出物である」 「映画のセットはノー・クライ・ゾーン(泣きごとを言わない区域)だ」 どんな問題や不都合に見舞われようとも、決して映画のセットで泣きごとを言わないよう、心得ておくこと。 5・深く追求する 「最も深い領域まで、なるべく早く達すること。それらを最も高い領域にまで持っていき、落とさないようにすること」 映画を見ている者の心に深く潜り込んで、留まるようなものを追求する。 6・自分のビジョンを守る 「自分のビジョンはしっかりと確定させておくべきだが、セットにおいて暴君と化さないこと」 クリアなビジョンを持っているのであれば、誰かにそのアイディアを批判されても、論理的な反論と説得ができるような柔軟性を持つこと。 7・ビジネスを学ぶ ヘルツォークは基本的な法律の概念を学ぶことで、映画の費用や資金調達などについて知ることを勧めている。また、「決して弁護士に自らのことを交渉させないこと」と述べている。 8・お金の動きを追う 「資金の動きを見る」 「キャメル(CAMEL)の値段を知っておくこと」 ヘルツォークは毎晩、撮影が終わると資金を数えるらしく、資金の流れを理解することで、撮影状況を正確に把握できるようだ。 9・「もし君が2日経っても仕事が得られない場合、2年経っても仕事は得られないだろう」 10・自分だけの真理を作りだす 「事実は真理を構築しない」 「真理を照らしだすような現実を構築すること」 単に事実を述べるのではなく、心の内にある感情的な世界を語るようにする。 11・足を使って旅する 「観光旅行は罪だ。足を使って旅をするのは美徳である」 ヘルツォークはその土地に住んでいる人たちと同じ立場にまで接近して、人生をより近くで見なければならないと強く主張している。 12・Do it 「映画監督の使命はオーディエンスに畏敬の念と不思議な感動を人々に植え付けること」 自分の持っているすべてのものを注ぎ込んで、どんなことがあろうとも次のステップへ進み、自分の映画をつくること。  今から29年前、ヴィム・ヴェンダースの『東京画』に映る、若きヘルツォークはこのようなことを述べていた: 「我々の文明の状況と我々の内面の最深部、その両方に照応する映像が必要だ。つまり、それが必要ならば、たとえ戦場にでも行くことだ。8000メートルの山に登る必要があったら、どんなに難しくても登るべきだ。純粋で、澄んだ、透明な映像を得るためには・・・探さなくては・・・私は火星にだってロケットが飛ぶなら土星にも行く。NASAのスペースシャトルに生物学者や技術者を乗せ、宇宙空間で実験を行うというプロジェクトがある。私もカメラを持って同行したい。もうこの地上には昔のように映像に透明性を与えるものは見いだしえない。かつて存在したものはもうない。私はどこへでも行く」(*4)  それから25年後、『世界最古の洞窟壁画 忘れられた夢の記憶』などを撮り、相変わらず人々を魅了するようなイメージを追い求めているヘルツォークでありながらも、The Rogue Film Schoolで行われている授業ではストーリー・テリングの重要性やメトディックなことを教えているようだ。しかし、授業で教わるヘルツォーク映画術はまさに彼の生き方そのものである。ヘルツォークはいかなる状況や立場に置かれても、自分のヴィジョンをイメージとして作り出すことのできる人物を求めている。  そんなドイツの鬼才ヴェルナー・ヘルツォークも71才となり、今年中にはニコール・キッドマン主演、ジェームズ・フランコやロバート・パティンソンも出演する"Queen of the Desert"が公開予定となっている。今回のイメージの舞台は砂漠となるようだ。(*3) 楠 大史 http://ift.tt/1hKseKY (*1) http://ift.tt/1mW6oap (*2) http://ift.tt/U52NZt (*3) 『東京画』(1985) ヴィム・ヴェンダース (*4) http://ift.tt/1xp46Uy 参考資料 http://ift.tt/1t1BidW

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