2014年12月23日火曜日

[World News #147] 映画学校は本当に役に立つのか?  現在、日本にも数多くの映画学校が存在し、有名映画人がそこで教鞭を執っています。また、マーティン・スコセッシなど映画学校出身の映画作家も多く、近年ではむしろ映画学校で学んだ経験のない映画人を探す方が難しいかも知れません。しかし、映画学校で学ぶことは本当に必要なのか。あるいは少なくとも役に立つのでしょうか。映画学校の学費は年々高騰し、一方で映画製作費はデジタル化によって劇的に下がりました。映画製作を学ぶよりも、実際に自分で撮った方が良いのではないでしょうか。こうした疑問を、IndieWireのポーラ・バーンスタインがインディペンデント映画作家たちにぶつけ、彼らからの回答をまとめています(#1)。様々な立場からの異なった意見が存在し、バランスの取れた議論となっていると思われますので、その幾つかを抜粋して紹介します。 ------------------------------------ アンナ・リリー・アミールプール Ana Lily Amirpour 映画作家(代表作『ア・ガール・ウォークス・ホーム・アローン・アット・ナイト』) 同作品により、2014年最も期待すべき映画作家の一人として様々な賞を受けた ------------------------------------  以前、こう言ったわね。「映画作りというのはセックスみたいなものよ。やり方は一つじゃないの。そしてそれを学ぶには、自分でやってみるしかない」。今でもこの通りだと思うし、付け加えるなら、他のアーティストの作品作りを手伝うための場所は道具として使えるってことね。私はUCLAの映画学校で脚本を学んだけど、それがLAに引っ越す格好の理由になった。そこで何人かの良い友達と会ったし、その一人は私の映画編集者になったわ。あそこでは2年間で5本の長編映画脚本を書いた。でも、私は映画学校で映画作りの方法を学んだり、物語を語る方法を学べるなんて期待してなかった。だって、そんなことできないから。  映画学校は道具であって、道具はそれ自体では役に立たないものだと思う。道具が目的を持つには、他に沢山のものが必要なのよ。それは、他の何かを作るためにあるものなの。でも、道具になるのは映画学校ばかりじゃない。映画を見ることだってそうだし、好きな作品の脚本を読むこと、好きな監督のDVD特典を見てその舞台裏を学ぶこと、カメラを手にして作品作ってみること、世界を旅して回ること、本を読むこと、音楽を聴くこと。自分がクリエイティブになれて、自分がやってることや人生そのものに魅了されることであれば、何でも道具にするべきなの。映画というのはまさに人生を生きることであって、これは映画学校で得られるものじゃないわ。ヘルツォークがまさにそれを言い当ててたけど、彼はこう言ったの。「アフリカで生きるボクサーは、彼が世界で最高の映画学校を卒業するよりもフィルムメイカーとして相応しい訓練を受けている」。 ------------------------------------ アーロン・カッツ Aaron Katz 映画作家(代表作『コールド・ウェザー』『ランド・ホー!』) マンブルコア派の重要な作家の一人と呼ばれている。 ------------------------------------  僕にとって、映画学校に通った経験は二つの意味で重要だった。一つ目は、そこで実践的なアイディアを得られたこと。つまり、映画作りの技術的な側面だね。僕の学校は映画作りのスタイルに於いてとても保守的で、そのおかげで僕らは、映画作りが伝統的にどのようにあるべきものだったか理解できた。僕は、そこで学んだ方法からしばしば逸脱するんだけど、でもああした基礎があるおかげで、自分の見つけた新しい手段が有効だって逆に分かるんだよ。二つ目に重要なのは、そしてこっちが一番大切なんだけど、その後の人生で映画作りの協力者になってくれた沢山の人たちと出会えたことかな。 ------------------------------------ ロバート・グリーン Robert Greene 映画作家、編集者(代表作:『アクトレス』『フェイク・イット・ソー・リアル』) 「インディペンデント」誌が選ぶ、10人の最も注目すべき映画作家2014にリストアップされたドキュメンタリー映画作家。 ------------------------------------  私は映画教育の重要性を強く信じている。だからこそ、他の全てを捨てて、ミズーリ大学ドキュメンタリージャーナリズム科の創設に関わることにしたんだ。しかし、そこで学生たちに伝えたいのは、私自身が持つ基本的な信念に基づく。それはつまり、「正しい映画学校」なんてものは時間の無駄でしかないってことだ。確かに、完全に無駄ではないかも知れない。若者たちが自分で探求したり作業するための時間を持つことはいつだって良いに決まってる。そしてそれが、映画学校の提供できる最高のものなんだ。だが、私の経験で言えば、学生にとってもっと良いのは、他のフィルムメイカーの現場に入る術を見つけることだろう。例外はある。カリフォルニア芸術大学やハーバード大学感覚民族誌学研究所などがそうだ。しかし、大抵の映画授業ってのは、次のクリストファー・ノーランになりたがってる子供たちを捕まえて、彼らのポケットから金を吐き出させるための装置でしかないように見える。私はミズーリでそれよりもうちょっとマシなことができればと望んでいるんだけど。私自身はニューヨーク市立大学で映画を学んだが、それが良い経験だったとは言えない。 ------------------------------------ アレックス・ロス・ペリー Alex Ross Perry 映画作家(代表作『カラー・ホイール』『リッスン・アップ・フィリップ』) 『リッスン~』でロカルノ国際映画祭審査員特別賞を受賞。次世代のアメリカ映画を担う人材の一人として期待されている。 ------------------------------------  こうした議論を、映画学校が役に立つか/そうでないかという二者択一に押し込めるのは単純化しすぎだと思う。どんなものでも、ある人に役立つ場合があれば、別の人には役立たないってことがある。思うに、映画作家になりたい人間にとって、「単なる学生」として他に何もしなくて良い贅沢を与えられるのはこの上ないポジションなんだ。「本当の人生や仕事や責任」なんかから離れて「単に映画が作りたいだけ」の数年間を過ごして、それを役立てることができるかどうかは、その学生次第だ。僕の経験では、授業とバランスとりながら、クラシック映画見に行ったり、ビデオ屋の店員として仕事する中で知識を仕入れたりするのは、素晴らしいことだった。もし、たいていの学生が普通の学校でするように、お楽しみの間の義務のようなものとして映画学校に通っていたとしたら、僕は単に単位を取っただけで、映画作家にはなっていなかったに違いない。 ------------------------------------ ハル・ハートリー Hal Hartley 映画作家(代表作『トラスト・ミー』『シンプルメン』) ------------------------------------  僕は1980年から84年まで、ニューヨーク州立大学パーチェス校に通った。それは低中所得者階級向けに作られた学費の安いアートスクールで、奨学金まで付いていた。ここに通えたのは、僕の人生で最高の出来事だったよ。毎月185ドルの奨学金を返し終えたのは、2作目の長編『トラスト・ミー』を撮り終えて数年経ってから、1992年ごろだったのを覚えてる。卒業してから7年後だね。  当時、映画作りに関わる様々な作業を学ぶことが、学科の中心になっていた。しかし、僕らの先生は、映画作り以外の興味を僕たちが持つよう強く勧めていた。僕らが自分自身の力で自分が関心を持てる対象を見つけること、そしてそれを表現する適切な手段を見つけることこそがその目的だったんだ。  教育は大切なもので、時間を費やすに相応しいと僕は思う。どんな教育であっても。映画教育に関しては、最近ではラップトップで学べるし、カメラも安い訳だから、それ自体としてさほど重要な物ではなくなったと思うけど。(80年代には、映画撮影装置を使えるってだけで意味があったんだ。)  でも、若い人たちは出世競争から離れた場所で自分の作品を向上させる機会を持つべきなんだ。人間としても学び、自分が本当に興味を持つ対象を探し、商売の世界で成功するプレッシャーとは無縁に自分の感覚を養う。挑戦して失敗しても許されるような場所でね!だって、ものごとを学ぶってのはそういうことだから。保護施設だね。束の間の。苦痛や悩み、妥協や失望なんてものは、どうせその後味わうことになるんだから。 それに、目的がハッキリしてそのための情報も経験も豊富に持った大人に囲まれて学んだり作業する機会を持つことができるわけだし。 僕は、自分があんな安価に教育を受けることができて、いつか罰が当たるんじゃないかって感覚をずっと拭い去ることができなかったくらいだよ。 大寺眞輔(映画批評家、早稲田大学講師、その他) Twitter:http://ift.tt/NSy3rx Facebook:http://ift.tt/1knGQPv blog:http://blog.ecri.biz/ 12/26(金)19:00『私たちの好きな八月』 ミゲル・ゴメス特集@新文芸坐シネマテークにて上映! http://ift.tt/1uR44n5 #1 http://ift.tt/1GGgamw

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