2014年12月5日金曜日

'Inherent Vice' Will Screen in 70mm in Select Theaters. But is Bigger Always Better?

[World News #136] 70mm上映!?ポール・トーマス・アンダーソン監督新作『Inherent Vice』 トマス・ピンチョンの『LAヴァイス』を原作にした、ポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作『Inherent Vice』については、過去に取り上げました。(*1)その最新作がアメリカで来週ようやく公開されるようです。しかし、驚くべきことに『Inherent Vice』は一部の限られた映画館において、35mmフィルムをブローアップさせて70mmフィルムで上映されるようです。 現在映画産業はデジタル化への移行が進み、35mmフィルム上映の出来る映画館がただでさえ少なくなっていくなか、70mmフィルム上映の出来る場所はほとんどなくなっています。日本では、最後の収容人数1000人を超える劇場でありかつ、多くの70mm上映を行っていた大映画館ミラノ座が今年12月31日に閉館することになっています。私たちは、もはやまったく70mmフィルムでの上映の噂を耳にしなくなっているほどです。現在話題の『インターステラー』(2014)も70mmフィルムで撮影されていますが、それはかたちを変えIMAXという最新技術を駆使したデジタル巨大スクリーンで上映されています。 70mmフィルムの魅力は、フィルムそのものが大きい分画質が良いこと、そのことにより大きなスクリーンに投影出来る点がひとつあります。しかし、35mmを70mmにブローアップするというのは、元のフィルムより画質が向上するわけでないはずです。にも関わらずどのような利点があるのでしょうか。 実は、多くの映画が70mmでの上映を好んだのは、“音”という問題があるようです。Indiewire誌のMike Celestinoによる記事の中で、パシフィックシアターのJohn sitting氏が語ることによれば、「ドルビーサウンドシステムが1974年に導入されるまで、ほとんどの映画館で35mmフィルムはモノラルサウンドによる上映だった」ということです。こうした状況に対して、「(70mmフィルムが)より優れていた理由は、6チャンネルの音によるステレオサウンドを導入出来た」ということになります。ですから、「こうした音の優位性に基づき『枢機卿』(1963)に始まり90年代の『タイタニック』(1997)に至るまで多くの映画が35mmから70mmへとブローアップされ公開されました。」 他にもHauerslev氏によれば「より多くの光を使うことが可能で、くっきりとした色、輪郭を与え」、また「35mmフィルムに比べ(スクリーンへと)拡大される率が低いため、ほこりや傷が目立たない」といった視覚上の優位点も指摘されます。 しかし、70mmの6チャンネルがDolbyへと、70mmの大スクリーンがIMAXへと変わっていきました。幾つもの新たな技術が過去の技術を乗り越える中で、70mmフィルムによる上映の機会は現在無くなりつつあります。上映形態は、これからも変化を続けていくはずです。映画はこのように、様々なメディアを乗り継ぎながら変化していきます。既に日本では、ほぼ70mmフィルムを見ることは出来ません。それは、アメリカでお金がある人たちの限られた文化になってしまったのでしょうか。あるいはただのノスタルジックな考えに過ぎないのでしょうか。 しかし、「20世紀に非常に愛されたフィルムにこだわり、その死に抗いながら映画を撮り続けるのがポール・トーマス・アンダーソン監督です」と語られるように、事実としてフィルム映画を撮り続ける人がいます。そして、その彼の新作が70mmにブローアップされるということは、ひとつの探究あるいは可能性の見直しと言えるのではないでしょうか。それは単なる、フィルムVSデジタルという問題ではなく、ひとつひとつの(35mmから70mm)という方法を新たに試す行為です。 ポール・トーマス・アンダーソンのような監督が様々な方法で“技術”を探究し続けることは、フィルム原理主義とは違って、我々が映画のメディアに対して考える機会を残してくれていると捉えることは出来ないのでしょうか。それは我々にひとつひとつ、フィルムやデジタルあるいは音響技術などに“固有な良さ”を、味わう可能性を残すことになるはずです。 「」内引用元 http://ift.tt/1ymcbdD (*1)http://ift.tt/1ymce92 三浦 翔 横浜国立大学 人間文化課程3年 映画雑誌NOBODY http://ift.tt/1ofDLiA http://ift.tt/1iv7YL4

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