2014年12月1日月曜日

Les Inrocks - Cinéma: les révolutions technologiques qui arrivent

[World News #135] 映像・音響技術の進歩がもたらす映画館の行く末  今日において、ほぼすべての映画館がデジタル上映設備を設け、逆にフィルム上映設備を備えている映画館はめっきり少なくなってしまった。しかし、現存のデジタル上映設備を既に上回るもの(映像の解像度や上映機材)が出来上がりつつあるようだ。  多くの映画館で備わっているデジタルシネマ用プロジェクターは4Kや2Kが主となっており、4Kプロジェクターに至っては70mmフィルムに近いクオリティまで上映できるようになっているらしい。しかし、最近のカメラでは4Kのみならず、6Kで撮影できるものも作られており、12月12日に公開されるデイヴィッド・フィンチャーの新作『ゴーン・ガール』はRed Epic Dragon(6Kカメラ)ですべて撮影された6Kの初長編映画となっている。(*1)そのうち8Kカメラやプロジェクターが活躍する日も近いだろう。  また音響技術の進歩により、2012年ごろからドルビーアトモスの様な64本ものスピーカーを利用した立体音響システムも積極的に映画館へ導入されつつある。(最初にドルビーアトモスを使用した作品はピーター・ジャクソンの『ホビット 思いがけない冒険』(2012)のようだ)(*2)  こういった最先端の映像・音響技術を映画館の設備に取り入れることによって、映画館という場所で映画を見るということが、いわば自宅のテレビなどで映画を見たりするのとはいかに異なる、特権的な体験なのかということを強調し、人々の関心を集めるのに一役買ってはいるのだろう。それも映画館が現代で生き残るための、一つの戦略なのかもしれない。  その延長としてなのか、20th century foxが今年の9月に、新たな映画の上映フォーマットでウェス・ボールの『The Maze Runner』という作品をリリースしている。その新たなフォーマットとは、3つのスクリーンを前方と左右の壁に配置した、パノラマ式のトリプルスクリーン上映である。スクリーンで観客席の3方面を囲むことによって、映画への没入感をより高めようというわけだ。(*3)  しかし、こうした新たな技術を用いて上映することで、映画館で映画を見る意義を唱えるのとは全く逆の考えで、例えばクエンティン・タランティーノのようにデジタル技術に懐疑的な監督はフィルム上映こそ、本当の映画体験だと強く主張する者たちも居る。彼の次回作『The Hateful Eight』は70mmで撮られた西部劇であり、インタビューなどで70 mmの魅力を語ると同時に、デジタル上映についても言及している。 「それはテレビでは見ることのできない体験だよ。ただ、自分のアパートや小さな部屋、iPhoneやIPadで映画を見ていては、絶対に体験できないものだ。(…)デジタル上映っていうのは、単なる公共のテレビだよ。みんなで集まってテレビを見るんだ。唯一の違いと言えば、リモコンをスクリーンに向けないことぐらいだ。」(*4)  タランティーノの場合、些かフィルム上映に関してピューリタン過ぎるかもしれないが、他にも同じくフィルムを重視しているクリストファー・ノーランは『インターステラ―』のインタビューにおいて以下のようなやり取りを行っている(*5): ― あなたは35mmで映画を撮り続けている数少ない監督の一人ですが、決してデジタルへ移行することはないのでしょうか? クリストファー・ノーラン:クエンティン・タランティーノがやっているように、決して移行しないとは言いたくない。ただ、35mmを過去の産物として語るのは間違っているし、愚かなことだ。確かに昨今においては、すべてが早く移り変わっていくのは十分承知の上だが、考えてみてほしい:4年前、『インセプション』が公開された時はほぼ35mmしかなかった。今となっては『インターステラ―』の為に、私はアメリカで250巻集めるのに闘わなければならない。フィルムは依然として、最も明確で豊かな、最高のメディアだ。デジタルはまだ足元にすら達していない。私たちは芸術的な理由からではなく、ただ単に経済的な理由から35mmを捨て去ろうとしている。私は別にデジタルに対して抵抗はないし、デイヴィッド・フィンチャーやスティーヴン・ソダーバーグのように、いち早く自分たちの用途に合わせてデジタル技術を扱っている演出家たちをリスペクトしている。ただ正直なところ、アーティストたちに選択肢を与えなくなってきている。  ここ数年で急激にデジタル技術が普及し、あっという間にフィルム上映施設こそ逆に少なくなってしまったが、タランティーノやノーランのように新作をフィルムで作ることによって、フィルムの良さを改めて訴えると同時に、映画館で映画を見る意義を強めるきっかけも作っている。しかしノーランが現在と4年前の違いについて語っているように、技術の進歩は目まぐるしく、現在のデジタル上映機材を数年後には一式、すべて入れ替えなければ最新ではないという事態がやってくるかもしれない。そうすると映画館は結局、いかに最先端の設備を備えるのかという自転車操業となってしまう恐れもある。  しかし、新しい技術といえども、例えば映画館のスクリーンの大きさによっては2Kと4Kのプロジェクターを比較してもそれほど変わらない映像クオリティとなることはあるし、ドルビーアトモスよりも爆音映画祭のように音楽ライヴ用の音響機材を使って上映する方が刺激的だったりする。要はそれぞれの映画館によって最新技術も使いようであり、必ずしも最先端の設備を備えなくとも、充実した映画体験をすることはできるのではないか。  それにいくらデジタル技術が進歩したからといって、今まで上映されていたフィルムが全てなくなったわけでもない。いま私たちはまだフィルムでしか現存していない作品を見ることが出来るという幸運な立場にいるのをもっと意識するべきかもしれない。  楠 大史 (*1)http://www.lesinrocks.com/2014/11/14/cinema/cinema-du-futur-8k-hfr-3d-ce-va-changer-quelques-annees-11535280/ (*2)http://vimeo.com/40699179 (*3)http://www.lesinrocks.com/2014/09/02/cinema/escape-ecrans-triple-revolutionner-les-salles-cinema-11521876/ (*4)http://www.lesinrocks.com/2014/11/12/actualite/tarantino-realisation-cest-truc-jeunes-11535135/ (*5)http://www.lesinrocks.com/2014/11/08/cinema/christopher-nolan-on-laisse-choix-aux-artistes-11534349/

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