2014年7月28日月曜日

【World News #065】 リチャード・リンクレイター「Boyhood」 7月11日、リチャード・リンクレイターの新作、「Boyhood(邦題未定)」がアメリカで公開されました。実に美しく、映画的に傑作であり、そしていままで観たことのないような、注目すべき作品だと高く評価されています。とりわけ注目されるのはその撮影方法。少年の6歳から18歳までを描いたこの作品では、なんと役者たちが「本当に成長している」のです。 撮影期間は12年間。この作品は、2002年から2013年までの12年間、一貫して同じ登場人物を使って撮影されました。主人公Masonには Ellar Coltrane、姉の Samantha にはリチャード・リンクレイターの娘、Lorelei Linklater を起用。2002年に6歳だったColtraneは、撮影終了時には18歳になりました。実際と同じ年齢の設定で撮影されています。彼らはまさに、観客の目の前で成長していくのです。 また、この映画を取り巻く背景においても、音楽、技術、ポップカルチャー、ファッションまで、時代考証なんかするまでもなく、すべて「その時」のものです。この映画は12年間を詰め込んだタイムカプセルであると言えます。 この映画が、彼らが生きたその時間の記録、そしてその当時の雰囲気の記録である、その時その時の現在を映している、という点ではまさに記録映像、ドキュメンタリーであると言いたい。なのに、それは紛れもなく映画である、という点で非常に新しいのです。 この映画は、断章の形式になっています。その間隔は1日だったり、数日だったり、もっとずっと長く、直前とは全く違う状況にジャンプすることもあります。それは、プロの撮ったホームビデオ12年分のハイライトのようにも思えます。 いつも見ている映画とは時間の流れ方が違うので、変な、不快な感じがするかもしれない。しかし考えてみれば私たちの記憶とはまさに、この映画のように非常に断片的で、覚えていることをくっつけたものなのではないでしょうか。この映画は現在の連続であり、記憶です。記憶を映像化するならば、必然的にこの形式になるでしょう。 この作品は、2014年のサンダンス映画祭で初めて上映されました。変わった撮り方をしているということばかりに注目が集まってしまって、実験映画だと色眼鏡でみられるのでは、と制作側は危惧していたのですが、そんな心配も上映後には必要なかったことがわかりました。家族というものが、どう作られて、どう変わっていくかという描写の細やかさが評価され、受け入れられたのです。既に公開されたアメリカや欧米各地でとても高く評価され、盛り上がりを見せています。 2時間40分の上映時間も気にならない、むしろ、終わってほしくない。見た人はそう思うと言いますが、果たしてこの物語は本当に終わってしまうのでしょうか。リンクレイターの『ビフォア・サンライズ』(1995)、『ビフォア・サンセット』(2004)、『ビフォア・ミッドナイト』(2013)のBeforeシリーズのように、もう少し年齢を重ねた彼らがまたスクリーンに戻ってきてくれることを、私たちは期待せざるを得ません。 日本での公開は未定ですが、この評判からして期待していて良いのでは。待ちきれない人は、外国に飛ぶか、Beforeシリーズを復習しながら待ちましょう。 則定彩香 http://ift.tt/1ozAcYA 参考 http://ift.tt/1puWbfQ http://ift.tt/LxlxNa Boyhood 公式HP http://ift.tt/VAnPkk

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