2014年11月20日木曜日

[World News #128] フィルムは時代錯誤?『インターステラー』フィルム上映にみる限界と可能性 11月7日よりアメリカで公開され、今月22日より日本でも公開されるクリストファー・ノーラン監督最新作『インターステラー』。人類滅亡を防ぐべく、地球に変わる第二の惑星を探す宇宙の旅に出る…というノーラン監督のSF超大作だ。本公開に先駆けた11月5日、本国アメリカの映画館で35mm・70mmフィルムによる先行上映が行われたが、フィルム上映に関して劇場主たちから批判の声を受けていたという(*1)。 『インターステラー』の配給パラマウント映画とワーナー・ブラザーズは、先行上映に参加するアメリカ国内240館もの劇場が、10月頭の時点で未だ上映用のフィルムプロジェクターを準備していると発表。それもそのはず、アメリカ国内の映画事情も日本国内と同じように、殆どの劇場がフィルム上映では興行面で予算回収できないために、デジタル移行してしまったからである。 本作の監督、クリストファー・ノーランがフィルム映画の熱狂的な支持者であることは業界でもよく知られている。以前のInside IndieTokyoでも、クエンティン・タランティーノ、マーティン・スコセッシらが映画配給会社と協働し、フィルム生産打ち切りのため閉鎖寸前だったコダック社の工場と契約を交わした件に触れた(*2)。フィルムに惹かれる作り手にとって“フィルムかデジタルか”は映画製作において譲れない拘りであろう。 しかし、今回の『インターステラー』フィルム上映に関しては、さすがの劇場側も難色を見せた。ハリウッドのスタジオがフィルム手配を中止したことを契機に、現在世界各国の映画館は殆どすべてデジタル移行されている。皮肉にも『インターステラー』の配給であるパラマウント映画は、今年初めにフィルム配給を取り止めた最初の映画スタジオでもある。 全デジタル上映を行うジョージア州の映画館系列、スポットライト・シアターズのCEOであるジョー・パレッタ氏は「この試みは、確実に我々の行ってきたことを格下げしている」と述べる。「たった2日間のこの上映のためにフィルムを用意する予算はない。それだけでなく、フィルムを扱う映写技師すら用意できない」と苦いコメントを残した。パレッタ氏と共にフットヒルズ・シネマを経営するバイロン・バークリー氏も「時代錯誤で、無意味」と批判の声を露わにした。ハリウッドのスタジオからの資金援助はあるといえども、彼らのような小規模映画館チェーンの経営者にとっては金銭的ダメージを食らうのは当然だ。 しかし、35mm・70mm・DCP・IMAXと様々な方式で上映される『インターステラー』に対し、それぞれ絶賛の声もあがっている。「デジタルこそ暗さを活かして撮影できると聞いていたが、映写となると、やはり宇宙の暗さはフィルムのほうが美しく出る」、「確実にIMAXで観るべき映画。普通の劇場で観ていたらこれほど圧倒されていない」、「35mmにすることで、この世の他のものに全く類を見ない作品になった」…などの意見が殺到している(*3)。デジタル上映時代にあらゆる映画上映の可能性も示唆している、新しい映画ともいえるだろう。 記事・内山ありさ(早稲田大学) *1 Why Theater Owners Aren't Happy About Christopher Nolan's 'Interstellar' Film Initiative http://ift.tt/1tl4UTK *2 [World News #069]絶滅寸前なフィルム映画のため立ち上がる!タランティーノ、ノーラン、スコセッシら奮闘(内山ありさ) http://ift.tt/14MkcMz *3 70mm? IMAX? DCP? How Format Affected Our Theatrical Experiences With Christopher Nolan's 'Interstellar' http://ift.tt/14MkcMC



via inside IndieTokyo http://ift.tt/1xPVDHY

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