2014年11月14日金曜日

[World News #126] ポール・トーマス・アンダーソンが紹介する“Mondo Hollywood” 11月8日~13日、ロサンゼルスのチャイニーズ・シアターおよびエジプシャン・シアターで、アメリカン・フィルム・インスティチュート主催の映画祭「AFIフェスト」が開催されました。新作映画の見本市というよりも、アカデミー賞を始めとする今年度のアメリカの映画賞レースに参加する作品のお披露目の場として知られる映画祭で、11日にはクリント・イーストウッドの最新作“American Sniper”が初上映され話題になりました。 さて、先月のニューヨーク映画祭でお披露目されたポール・トーマス・アンダーソンがトマス・ピンチョンの小説『LAヴァイス』を映画化した作品 “Inherent Vice”も同映画祭で8日に上映されたのですが、その上映前に「ポール・トーマス・アンダーソン・プレゼンツ」という名目で “Mondo Hollywood”(#1)という作品の上映、ならびに同作の監督であるロバート・カール・コーエンとアンダーソンの対談が行われました。今日はその模様をレポートしたIndieWireの記事(#2)とともに“Mondo Hollywood”について触れたいと思います。 “Mondo Hollywood”(67)は1965~67年に撮影されたドキュメンタリー映画で、ロサンゼルスに暮らす有名無名の人々の姿が彼ら自身による(ただし時に誰の独白であるかわからなくなる)ナレーションとともに映し出されます。登場するのは、ストリッパー、役者、歌手、ヘアスタイリスト、サーフ映画の製作者、サイコロジスト、彫刻家、ハウスキーパー、スカイダイバーなどなど多彩な人たち。そして商工会議所の懇談会やイギリス王室のマーガレット王女がユニバーサルスタジオを訪問した際の記録映像、さらに反共主義やベトナム戦争への反対デモ、ワッツ暴動で廃墟と化した場所なども撮影されています。 ちなみに1968年のアヴィニヨン映画祭に招待されながらも「視覚的攻撃性や編集による心理操作が国民の心の健康にとって有害である」という理由でフランスで上映禁止にされた過去を持つ曰く付きの作品でもあります。 アンダーソンがこの作品を観たのは近年のことで、1970年のロスを舞台にしたトマス・ピンチョンの小説『LAヴァイス』が原作である“Inherent Vice”を準備していた時に、ロスにあるラルゴというクラブのオーナーからこの作品を勧められたのだそうです。最初はこの作品に対して懐疑的だったというアンダーソンですが、観た途端に「こんなものは今まで見たことがない」と思ったと言います。「変わり者、厳格な人、人情深い人などなど多様な人々に接近し、彼ら個人を映し出したこの映像に心を動かされ、“Inherent Vice”を作る上でとても参考になりました。僕らの作品は1970年が舞台ですが、その数年前に作られた作品であることがより一層貴重だったんです。なぜならこのフィルムはコミュニズムやベトナム戦争という時限爆弾がカチカチと時を刻んでいるのを捉えているからです」 当時、アリフレックスの35mmカメラを自ら肩に担ぎ、ロス中を歩き回っていたコーエンは「私はただその時間が“ある”ことをとらえようとしました」と言います。「何かにカメラを向けることは、その時間を記録しているということです。47年後にここに座って、ポールを含めた当時はまだ生まれていなかった大勢の人たちと一緒に同じ映画を見ることになるとは想像もしていませんでした。もし1955年、私が25歳だったころに、50年前の1900年あたりに撮られた風景を見ていたら唖然としたと思いますよ。完全に違う世界ですからね」 この対談をリポートしたチャーリー・シュミードリン氏によれば、“Inherent Vice”には“Mondo Hollywood”からの影響が具体的にわかる場面がいくつかある(たとえば“Mondo Hollywood”に登場する、マリブの山頂に10ドルでガレージを借りて猿とともに遊んでくらす百万長者の青年のキャラクターがホアキン・フェニックス演じる主人公に投影されていると思われるシーンなど)とのことだが、アンダーソンとコーエンの発言を読む限りでは、やはり“Inherent Vice”が受けた影響は、“Mondo Hollywood”の細部に宿った時代の空気のようなものにこそあるように思えます。 コーエンもアンダーソンの作品のそういった点を高く評価しているようで、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』については自身の体験を交えて以下のように褒めたそうです。 「私は1950年に中央カリフォルニアにディアブロ山脈にある採鉱場で鉱業アナリストをしていたんです。その鉱山のオーナーはジョン・ウェインでした――もちろん彼がそこに来たことはありませんが。私は夏の間そこで時給1ドル25セント、食事つきで働き、4人の同僚とひとつのテントで寝泊まりしていました。あなたの映画(『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)を観た時、そこには私が知っている正真正銘の鉱山での娯楽が描かれていると思いました」 さらに“Inherent Vice”に関しても、「私たちは物理的にはここ(ハリウッド)にいますが、一方でここにはいないんです。ハリウッドは記憶の中にある…。ここは幻想をつくり、それを世界中の人々に売るビジネスマンによって舗装された砂漠です。人々の記憶の中にあるハリウッドの人々やイメージはテレビや映画というフィルターを通したものです。 “Inherent Vice”を観ましたが――ポールはそういった感覚をも表現できる達人ですね」と述べています。 “Inherent Vice”は12月12日より北米の一部で公開、日本での公開は2015年に予定されているそうです。同作を観る前に、ぜひ“Mondo Hollywood”もご覧になってはいかがでしょうか。(#3) 黒岩幹子 #1 http://ift.tt/1zo3JYy #2 http://ift.tt/1pXUcHy #3 “Mondo Hollywood” (Youtube) http://ift.tt/1zo3JYA

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