2014年11月13日木曜日

[World News #125] 「非営利」(Non-Profit)を巡って  今日は「非営利(Non-Profit)」に関わる記事を紹介します。映画製作と配給、上映活動における新たな動きを巡る話題です。著者の Nick Toti 氏はこれまでインディペンデントの映画監督、俳優として活動し、これまでに蓄積した経験と知識を携えて、非営利団体である「Interesting Production」を設立したといいます。  日本国内と米国では寄付金や営利/非営利の考え方がおそらく異なるので、単純に参考になるものではないかもしれませんが、記事の前半で語られる非営利活動の歴史、現在を考察した分析はなかなか示唆に富んでいるように思います。また映画に限らず、文化活動の運営者が「何から独立するべきなのか?」といった問題を考えるにあたっても、一読の価値があるかもしれません。 (※1) 「過去二年間、私は様々な文献や人々の意見から、映画という産業の未来について考えてきた。たとえば、テッド・ホープは持続的な産業システムの形成が急務だと語っていたし、ティム・リーグは配給の新しい経路を模索している。海賊版の普及については賛否両論があり、あるいは、クラウド・ファウンディングによる出資の是非をめぐる議論も依然として不明瞭なままだ。  しかし、私と、映画製作のパートナーであるマット・ラサムの考えでは、これらのいまとなっては聞きなれた議論のほかにも、いくつか重要なことが見落とされている。まず、こうした意見はすべて映画産業の内部にいる人々のものだ。かれらの多くが、海賊版の流通に否定的な姿勢をとっているのは、沈みゆく船の甲板に空いた穴をふさごうとしているかのようだ。しかし、映画製作はこれまでになく盛んなものになっている。高性能の機材はますます安価になり、クラウドファウンディングの普及、オンラインで配給される作品へのアクセスのしやすさなど、いくつかの要因が状況を変化させてきたのだ。産業の既存の体系はそういった流れに遅れまいとするけれども、我々真にインディペンデント(ここでいう「インディペンデント」とは、注目を集めているわけでもなく資金があるわけでもない、しかし自身の内側からの想いを原動力に映画を撮り続けている若者のことだ)の作家こそは、これらの方法をフルに活用することができる」 「これまで非営利的な製作体制は、主に劇場を運営する企業によって採用されてきた。これらは文化としての映画の存続を目的とし、理解のある観客の直接的な支援に支えられてきた。現代のインディペンデント映画は、ごく自然にこうした非営利の方法論に向かっているのではないだろうか。予算が少なかったり、個人的な作品であったり、あるいは何か非常に偏った趣味の映画は、寄付金によって資金が集まってはいても、採算をあげることは稀である。しかし、情熱のある観客と作家たちの新たなコミュニティの形成によって、こうした作品に横のつながりを生み出すとともに、経済的な面でも、口コミなども利用しながら製作を支援することが可能になる。」 「例えば「Nobudge」(※2)のようなウェブサイトは、20世紀半ば「Little Journal」が詩の文化にたいして果たした役割を、映画産業にたいして果たそうとしている。「Simple Machine」(※3)は未公開の映画を観客に(註:例えばプロデューサー、映画祭ディレクターに)届ける役割を果たしているし、「Micro-Wave Cinema Series」(※4)は作家と情熱的な観客をつなげようとする試みである。こういった事柄は、市場の枠組みの中でのアメリカの映画産業の在り方を超えていく、その始まりのメディアであるように思える。」 「現在まで、非営利の団体にとっての最大の障壁は「文化への寄与」にかかわる問題だった。非営利団体は、ことさらにその活動が「文化的に意義がある」ことをしめさなければならない。たとえば「教育的なプログラム」であることや、地域文化や社会的問題と関わるものであることを強調する必要がでてくるのだ。こういった側面のために、非営利の映画製作団体の上映活動は教育目的重視のドキュメンタリーや、時事的な政治問題を直截的に扱ったフィクションに限定されることが多かった」 「こうしたことを視野に入れて、私とマットは従来とは異なる方向性を模索していた。我々が作ろうとしている映画は一般的に広い支持を受ける類のものではないかもしれない。けれど私は映画を通してでしか伝えられない何かを表現するために作品をつくるべきだと思っていた。そして現在、インターネットを通してそういった映画を、そうした関心を持つ人々と共有することもできる。そうした流れで我々は『Interesting Production』という名前の非営利の映画会社を設立したのだ。新たな映画製作と配給の体系の一端となればと思っている」 「Interesting Productionではすべての作品を無料で公開する予定だ。配給経路に作品をゆだねることは視野に入れない。我々がやろうとしていることはある種の極北で、あまり他の人たちはマネしたがらないかもしれない。けれども、新たな開拓を試みるときには、大胆さが必要な場合もあるはず。すべては寄付によっておこなわれる。それはつまり、この事業が継続するか否かは、私たちも属している共同体の善意に依っているということだ。...時間と労力を要することは間違いない。  現代はアメリカ映画産業にとって、刺激的な時代だと思う。我々の理想とする映画を支える経済のシステムは未だ明確なかたちをとっていないが、資本のみが猛威を振るった時代は終わろうとしている。大いなる理想とヴィジョンを持ち、未来のシステムを想像する人々にとっての、新しい時代が到来しつつあるのではないか」  著者はこの記事で、IndependentであることとNon-profitであることを延長線上に捉え、それらふたつの性格を包括できるようなシステムの構築を目指しています。  日本でもクラウドファウンディングはかなり定着し、Load Showなどの活動に、新たな配給活動の一端を見ることができます。冒頭でも書いたように、米国と日本ではかなり文脈が異なるとはいえ、様々な形式の製作・配給・上映の方法が実践されているという状況には、今後も注目したいところです。 (※1)http://ift.tt/1up17Jy... (※2)http://nobudge.com/ (※3)http://ift.tt/1ovGkwn (※4)http://ift.tt/1xQ71Tk 文責:井上遊介(映画批評MIRAGE 編集委員) 11月15日は七里圭さんのイベントがあります。 (http://ift.tt/1up17JD パンフレットの編集などお手伝いしました。ご興味あればぜひ。

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