2014年8月7日木曜日

[World News #071] なぜ、LGBTを扱った映画はヒットしないのか? みなさんもご存じだろうが、LGBTとは、レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスセクシャルというセクシャル・マイノリティの名称をまとめた言い方だ。今映画業界では、そのLGBTに当てはまる性を持った人を主人公にした映画は当たらない、という法則ができているらしい。 アメリカ・カナダにおいて、2010年代に入ってから4年半の間で、興収が100万ドルを超えた作品は1200本に上る。その1200本のうち、LGBTといったセクシャル・マイノリティを扱った作品は、7本しかない。具体的には、『キッズ・オールライト』(2010)、『アデル ブルーは熱い色』(2013)、『フィリップ、きみを愛してる!』(2010)、などだ。(注) 2013年に日本でグザヴィエ・ドランが注目を集めるきっかけとなった作品『わたしはロランス』も、この中には含まれていない。ドランの出身国カナダを含めているのに、だ。 評価の高い作品であっても映画館にはシネフィル以外の客が入らないということからして、ここで問題になっているのは作品の良し悪しではない。作品の良さと興行収入は、(比例するのであれば非常に嬉しいのだが……)比例しないことがままある。すなわちここでは、作品にセクシャル・マイノリティが大なり小なり関わっているというだけで、一般の観客は映画館に観にいかない傾向にある、ということだ。 そもそもLGBTモノは、1990年代には流行っていた。マイク・ニコルズの『バードケージ』(1996)は興収1億2400万ドルという大ヒットを記録した。それに対して、10年代の一番のヒットは『キッズ・オールライト』の2000万ドルだ。この差が生じた背景に、90年代はLGBTに関する権利運動がかなり盛んだった、ということがある。こぞって作られたし、注目を集めた。そして今は運動も落ち着いて、人々の関心が薄れていくのに伴って客が入らなくなった、ということなのだろう。 では、そもそもLGBT作品の本数は減っているのか?そうだ。減っている。それも、90年代に比べて、こういった作品に割かれる予算がぐっと減っているのだ。 それは観客にとって、わざわざ映画館に行って大きなスクリーンで見て気持ちがいいのはアクション映画やSFであって、ヒューマンドラマは自宅でのんびり手軽にDVDで見ればいいという傾向があり、それが関係しているだろう。とくにセクシャル・マイノリティを扱ったような小難しそうな作品は、映画館でかけても人が入らない。映画制作者側が、人が入らないテーマにするとスポンサーが出し渋るから企画段階から回避する、というのも間違いなくあるだろう。 映画に対して、テレビはというと、性の問題について寛容だそうだ。スティーブン・ソダーバーグはゲイをテーマにした作品を撮ろうと思った時に、映画では、特にハリウッドでは予算がもらえない上に客も入らないので、テレビメディアに移行した。それがテレビ映画『恋するリベラーチェ』(2013)である。この作品は、のちにカンヌ映画祭で賞争いに参加している。 たしかに、主人公がゲイである/レズビアンであるというだけで社会的な問題性を孕むので、抵抗を感じる人も多く、見るにしても映画館で高い金を払ってみようという気にはならないかもしれない。社会的な側面から見ても、運動は落ち着いたものの、やはり社会全体がセクシャル・マイノリティを受け入れる体制ができているというわけではないのだ。 こうした作品は、メッセージ性が強くて、シネフィル向けの、一般受けのしない作品であるというレッテルが貼られやすい。しかし面白い作品はいっぱいある。LGBTだけでなくても、そうしたテーマはたくさんあるはずだ。どんどんそうした作品に扉を開いていくのが、映画的にも社会的にも重要になってくるだろう。 則定彩香 http://ift.tt/1ozAcYA 注 2010年代LGBTの主人公の映画興収ランキング 1リサ・チョロデンコ『キッズ・オールライト』$20,811,365 2アブデラティフ・ケシシュ『アデル ブルーは熱い色』$2,199,787 3ジョン・レクア、 グレン・フィカラ『フィリップ、きみを愛してる!』$2,037,459 4ブノワ・ジャコ『マリーアントワネットに別れをつげて』$1,347,990 5ペドロ・アルモドバル『アイム・ソー・エキサイテッド!』$1,368,119 6ローランド・ジョフィ『ミッション』$1,062,940 7ジョン・クロキダス『キル・ユア・ダーリン』$1,062,940 http://ift.tt/V4cAj9

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