2014年8月30日土曜日

Les Inrocks - French Touch et ivresse de la nuit: sur le tournage d'"Eden" de Mia Hansen-Løve

[World News #086] ミア・ハンセン=ラヴの新作“Eden” 時代を生き永らえた眼差し  「9月の初め、猛暑の終わりに、ハドソン川沿いのレッド・フックの工場地域から数歩にある、ブルックリンの人気のない狭い通りに私たちは集まった。そこにはオフィスへと改築された古い消防署やシャッターが閉じられた店舗、そして音楽の振動が漏れ出る建物がある。SRB Brooklyn、どの町にも何百とある隠れクラブの一つだ。13時になると、Charles Dockinsの“Happy Song”が響きわたるなか、若者の群れがフロアにやってきた。歌手の歌声がようやくベースラインと重なり合うとき、暗闇の中では動きで活気づいている:若者たちはブレイクダンスを踊り、他の者たちはタバコを吸ったり、酒を飲むかナンパをしている。 そんな人込みの中で、ダンサーたちの間をすり抜けていくシルエットが見受けられる。背中を丸め、モニターに釘付けの目:ミア・ハンセン=ラヴだ。フランス映画監督である彼女はニューヨークに新作のシーンを撮影するためにやってきている。“Eden”は1990年から2000年におけるフレンチ・ハウスのムーヴメントに刻まれた音楽と青春、そしてラヴストーリーを描く作品だ。」*(1)  アルノー・デプレシャンの“Jimmy P.”、オリヴィエ・アサイヤスの“Idol’s Eye”、そしてミア・ハンセン=ラヴの“Eden”といい、最近フランス映画監督たちがアメリカで映画を撮る機会が少しずつ増えつつあるようだ。  「フレンチ・ハウス」と呼ばれた90年代に席巻した、フレンチ・エレクトロ・シーンが舞台となる“Eden”では、ポールというDJの栄光と墜落を描いている作品らしい。このポールの役はミア・ハンセン=ラヴの七歳かけ離れた実の兄である、スヴェン・ハンセン=ラヴ(Sven Hansen-Løve)がモデルとなっているらしく、彼は実際にフランスでフレンチ・ハウスのムーヴメントを作り上げていったDJの一人であり、ムーヴメントの中心に属していた人物のようだ。そんな彼もフレンチ・ハウスの主役たちと共に栄光、そして墜落を知ることになった。  「3年前に、ミアがあの時代を語ろうとしている意図があることを話してくれた。僕は音楽から身を引こうとしていて、自分のレーベルも破産しかけていたし、自分に自信がなくなっていたんだ。映画を彼女と執筆することは、やっと自分に踏ん切りをつける方法でもあったし、自分が最も望んでいた文学に身を費やすことができたよ。」と語るスヴェン。*(1)それに対しミアは:  「私は一種のエモーションと別れようとしていて、それは私の前作でも核心となっている死別に対する悲しみでした。“Eden”でも喪失に対する考えが再び現れますが、物語は新たな活力と喜びによって支えられています。よく通っていたスヴェンのパーティーに結び付けられる、私の青春時代の別の様相を、もっと輝かしいものとして取り組まなければならないと感じました。それと、あの世代の人たちには何か惹きつけられるものがあって、無邪気さ、パーティーを存分に楽しもうとする生き方、何も見越さない姿勢。今日においては失われた純真さのように感じます。たとえ来るべき憂鬱がすでに告げられていたとしても、それは一つのユートピアでした。何故なら、こういった人生の関わり合いは長く続くはずはなかったからです。」*(1)  そして2011年から二人はフィクションに自分たちの思い出を織り交ぜながら、シナリオを執筆し始める。当時を美談やノスタルジーとして語るのではなく、当時渦巻いていたエモーションが彼らの実体験と共に語られる本作では、音楽も見どころの一つだ。ミア・ハンセン=ラヴはいわゆる映画音楽の作曲家の起用には“断固反対”派であり、既存の音楽を使う主義*(2)である彼女が本作で、どのような曲で当時鳴り響いていたサウンドを表現するのか非常に興味深いところである。  「無頓着にあの日々を過ごしていた頃を思い返せば、不安もなく、拘束もなく、ただ時間だけがとてつもないスピードで過ぎ去っていったよ。そして今になって、なんでもっと疑問を持たなかったのかと自分でも思うよ。」*(1) と心境を打ち明けるスヴェンも幾度の挫折を経験し、コカイン中毒で死んでいった仲間を見つつ、彼は何とか現代まで生き永らえた。そんな兄の背中を見てきた実の妹が数年後、彼と彼らにオマージュを捧げたいとやってきたのだ。ミアはスヴェンの背中に何を見たのか。その投げかけられた眼差しはイメージとなり、サウンドとなり、エモーションとなって、私たちにどう響くのだろう。    かつてこの時期におけるフランス音楽史を語られたことがないという、ミア・ハンセン=ラヴの新境地でもあり、野心作の“Eden”はトロント国際映画祭にて9月に上映され、フランスでの公開は11月とのこと。日本での公開も待たれるばかりである・・・ 楠 大史 http://ift.tt/VS1cHN *(1) http://ift.tt/1tWzZjs Charles Dockinsの“Happy Song” http://ift.tt/VS1cHF

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