2014年6月16日月曜日

[World News #037]台詞なし、過激シーン続出、本国韓国でも実質上映不可!キム・ギドク史上最大の問題作『メビウス』 『悪い男』、『嘆きのピエタ』など数々の作品で、今やヴェネチア・ベルリン・カンヌ三大国際映画祭の常連となった韓国の鬼才、キム・ギドク。工場員、海兵隊を経てフランス留学、というその特異稀なバックグラウンドゆえに放たれる、社会に対する強いメッセージ性と警鐘、過激な描写が特徴的な彼の作品は、これまで例に漏れず注目を集めてきた。そのキム・ギドク史上”最高傑作にして最大の問題作”とされていた『メビウス』が今冬日本公開に先駆け、新宿シネマカリテでの「カリコレ2014」(*1)のクロージング作品として6月13日初上映され、反響を呼んでいる。 『メビウス』は2013年にキム・ギドクにより脚本・製作された韓国映画で、性的欲求により崩壊するある家族を生々しく描いた作品。第70回ヴェネチア国際映画祭においてコンペティション外で世界初公開されたが、上映時には失神者も続出した。それもそのはず本作は、夫の浮気に逆上した妻が、夫への復讐のため息子の性器を去勢し、息子のその姿を痛ましく思った父親が、今度は自らの性器を切り取り…という、ギドクの過去作品でもありえない程の奇天烈ストーリー。本編には会話が全くなく、音声は呻き声や喘ぎ声のみで、もちろん字幕もなし。新しいサイレント映画のような奇抜な試みも特徴的である。 http://ift.tt/1n3TyAw しかし、去勢、自慰行為、近親相姦などのあまりにも過激なシーンが多すぎるとして、韓国映像物等級委員会(KMRB)は”制限上映”の審査を下した(*2)。KMRBによる”制限上映”は、上映・広告・宣伝で制限が必要だと判断される映画に下す判定。この判定が下された映画は、制限上映館として登録された劇場でしか上映と宣伝ができなくなる。問題は韓国で制限上映可の専用劇場がないことであり、つまり、制限上映の判定を受けることは、事実上、韓国国内での上映ができないことを意味する。制限上映の審査を受け、ギドクはKMRBに意見書を提出。問題とされた母と息子の近親相姦描写に関して「映画の中で近親相姦の描写は最も強調したい部分ではないが、この映画のテーマを貫く重要な装置で演出者としては避けられない表現だ」とコメントし、「『メビウス』は人間の数多くの問題の一つである性と性器について問った映画」、「せめて19歳以上の韓国人たちがこの映画を見て自身で価値を判断してほしい」と訴えた(*3)。KMRBによる再審の結果、特に問題とされた2分30秒間のシーンをカットすることを前提に、”R18指定”を受けた。ギドクはカットを要請されたシーンに対して「映画として避けられない描写だった」と苦言しているが、ようやく漕ぎ着けた本国韓国での公開(2014年9月5日)に感謝の意も表している(*4)。 国内上映は不可能と言われてきた衝撃の本作だが、奇跡的に日本解禁が決定している。キム・ギドク監督最新作『メビウス』は、新宿武蔵野館にて今冬ロードショー予定。 また、冬まで待ちきれないというキム・ギドクファンの方に朗報。キム・ギドクがプロデューサー、原案、編集を手がけた『レッド・ファミリー(原題)』(イ・ジュヒョン監督)がこの秋、新宿武蔵野館ほか全国順次公開予定である。韓国で暮らす一見普通の家族は、実は北朝鮮から送られたスパイだった…というこれもまたギドクらしい、ユニークな設定の本作だが、笑いと同時に大粒の涙を誘う。第26回東京国際映画祭で観客賞を受賞、という太鼓判付きの作品だ。 (記事・内山ありさ) *1 カリコレ2014/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2014 http://ift.tt/1d9uGmE *2 TwitchFilm.com http://ift.tt/1521eR8 *3 Kstyle http://ift.tt/1n3TBw1 *4 The Wall Street Journal http://ift.tt/1lyBtgV *5 GAGA 『レッド・ファミリー(原題)』 http://ift.tt/1n3TzEl



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