2014年6月15日日曜日

ジョージ・タケイ来日講演会レポート【前編】 変革の起こし方 ~ハリウッドへの道、そしてその先へ~ 先週、『スター・トレック/宇宙大作戦』シリーズでおなじみ、ハリウッドで最も成功した日系人俳優といわれるジョージ・タケイ氏が講演会などの来日ツアーを行いました。Inside Indie Tokyoでは、6月5日に行われた東京でのトークイベントを前編と後編に分けてレポートします! ジョージ氏といえば、『スター・トレック/宇宙大作戦』のカトー役(オリジナル版ではヒカル・スールー)です。1966年から放送されたこの革新的なドラマのテーマの一つは「多様性」でした。 物語の舞台は、人類が地球人として一つになり、異星人との交流をもつ23世紀。アメリカ人、アジア人、ロシア人、アフリカ人、またはバルカン人などの異星人、そして男性、女性が同じコックピットに乗り、未知なる宇宙を開拓していく姿は、当時、東西冷戦や人種差別といった問題をかかえる世界に希望をもたらしました。日系人であるジョージ氏も、多くのアジア系アメリカ人のロールモデルとなります。 そして現在は、オープンリーゲイとしてLGBTの権利獲得運動にも参加しています。77歳という高齢にもかかわらずFacebookを使いこなし(フォロワー数713万人!)、精力的に活動する彼は、日々、世界中の人々にあきらめないことの大切さ、自己改革の可能性、そして自分自身が世界に変化をもたらすことができるのだという希望を伝え続けているのです。 会場の期待が高まる中、いよいよジョージ・タケイ氏の登場です! 熱い拍手に笑顔でこたえつつ、「まるでスター・トレックのファンミーティングのようですね」とさっそくジョークを飛ばすジョージ氏。和やかな雰囲気の中、彼は自分の生い立ちについて語りはじめました。 1937年生まれのジョージ氏は、太平洋戦争中、三年にもわたる強制収容所での生活を強いられ、その後も10代まで貧しい暮らしを経験します。あるとき彼は、公民の本を読んで疑問をもちました。「そこには、自由や幸福というすべての人間にはほかの誰にも奪えない権利があると書かれていました。私は強制収容所での経験を思い出して閉口しました(笑)」。 彼はその気持ちを父にぶつけます。父は、「民主主義には不確実な面もあって、間違った選択をすることもある。でも、民主主義は絶対にあきらめない。あきらめずに声を上げる人がいれば希望がなくなることはないのだ」と息子に伝えました。この言葉は、その後のジョージ氏のさまざまな社会活動の源となります。 彼が自分のセクシュアリティに気づいたのは、10代の頃でした。「年頃になると、周りの男友達はみんなレベッカがキュートだ、モニカがホットだと騒ぎはじめたけど、私はボビーという男の子がキュートでホットだと思っていました(笑)。当時それを口に出す勇気がなかった私は、女の子が好きだという“演技”を始めたのです」。その後も、俳優としてのキャリアを守るため、同性愛者であることを隠して若くてきれいな女性とレッドカーペットを歩き、後でひそかにゲイバーに向かうという生活が続きました。彼は、そのように偽りの自分と真の自分の二つの顔をもって生きることはとてもつらいものだったと振り返ります。 そんな彼をカミングアウトへと導いたのは、「怒り」です。2005年、カリフォルニア州は同性婚の法案を通過させ、あとは知事の署名だけという段階までこぎつけました。当時のカリフォルニア州知事といえば、そう、あのアーノルド・シュワルツネッガー氏です。しかしシュワルツネッガー知事は、この法案に反対していた保守派のご機嫌をとるため、署名を拒否したのです。 「彼が知事になれたのは、ハリウッドのLGBTコミュニティが彼を支持したからです。しかし彼は私たちの信頼を裏切ったのです。そこで私は思いました。自分のセクシュアリティを隠している私も彼と同じ偽善者ではないかと。「怒り」こそが、私を突き動かしたのです。そして私は同性愛者であることをカミングアウトし、LGBTの人権運動をはじめました」。 エスニックマイノリティとして、セクシャルマイノリティとして、数々の困難とたたかってきたジョージ氏。そんな彼が、「人種差別とLGBTに対する差別はよく似ている」というのは、とても説得力があります。どちらも、ただありのままの自分でいるというだけで差別を受けます。ある人が自然な状態でいるということを否定するのは、非常に不自然なことです。人種差別がおかしいということは、私たちは歴史的な経験により知っています。今では、人種差別のことを合理的だという人はいないでしょう。 では、なぜLGBTに対しては理不尽な態度をとれるのでしょう?なぜ私たちは同じ間違いを繰り返すのか?私たちは歴史からもっと多くのことを学ぶべきではないのか?私自身、このような疑問でいっぱいになりました。 しかし、「アメリカの歴史を知っているからこそ、私は希望を失わない」とジョージ氏は語ります。女性の公民権獲得、奴隷の解放・権利獲得といったアメリカの歴史が「変革の実現」を証明しているからです。歴史が繰り返すことは、希望でもあるのです。 「LGBTをとりまく状況の変化も、ゆっくりと、確実に進んでいると思います。私たちの民主主義は、いま、ここで作られているのです。だからこそ今日ここで私は、日系人の、ゲイの、誇り高きアメリカ人としてお話することができています。今日は、私の話に耳を傾けてくださってありがとうございました」。 どんなに理不尽な状況にあっても、決してあきらめず、自己の、そして世界の変革を実現させてきたジョージ氏の言葉はとても力強く、しかし優しく私たちの心に響きました。なぜ彼が長きにわたり世界中の人々を虜にしてやまないのか、その理由を肌で感じた瞬間でした。 このあとイベントは、質疑応答コーナーへとうつります。ここでもまた、『宇宙大作戦』の撮影当時の裏話から、マイノリティであることをどのように克服したか、日本のマイノリティについての問題を解決するにはどうしたらよいかといった話題まで、真剣に、しかしユーモアを交えつつ、興味深い話をたっぷりと語ってくれました。 後編では、こちらをレポートさせていただきます! お読みいただき、ありがとうございました。 Posted by 北島さつき アメリカ大使館主催:変革の起こし方 ~ハリウッドへの道、そしてその先へ~ http://ift.tt/1ni9LF8



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