2014年5月31日土曜日

[World News #026] 男社会の映画業界の影 Yes All Women 2014年5月23日、アメリカはカリフォルニア州、サンタバーバラで、ある大学生が銃を乱射し、6人を殺害、13人以上を負傷させ、犯人自らも拳銃自殺するという大惨事が起きました。犯人は22歳の大学生、エリオット・ロジャー。彼は、事件を起こす2日前に、Youtubeに殺人予告動画を投稿していました。投稿されたビデオで彼は、誇張に満ちた言い方でこう宣言しています。 「自分は優れた人間であり、“アルファな男”なのに22歳で童貞、女性とキスもしたことがない。すこぶる不満である。だから自分を無視してきた女どもと、女と遊んでセックスしているような男どもへ報復をする」 この動画が撮られたのは、真っ黒なBMWの車中。ヤシの木を背景にしてマジックアワーに照らされており、劇調の言葉を選びながら撮影をしています。このビデオの中において彼はまさに、映画の中の、お決まりの悪役たちのようです。 好きな映画の中の悪役になりきって、極めて映画的な殺人予告動画を撮影したのには彼が「ハンガー・ゲーム」で第2班監督を務めた経歴のある映画監督、ピーター・ロジャーの息子だったことが大きく関係していると言われています。 映画は真実を映してはいません。そしてその映画から私たちは映画から、感じること、望むもの、考え方など、かなり強い影響を受けます。監督がやるって言ったら、映画の中では何でもあり。現実では思い通りにできない暴力だってセックスだって、何でも許されます。そして映画には、現実にありえないような登場人物や物語が、観客各々のアイデンティティや人生と溶け合ってしまう、そんな強い説得力があるのです。事件前から精神を病んでいた彼は、このおよそ現実ではない、映画監督たちの理想だらけの「妄想」にあてられてしまったのでしょうか。 しかし、ここでは映画が悪いと言いたいわけではないのです。ここで注目しなければならないのは、その映画監督たちというのは、ほとんど男性によって占められているということです。2013年にヒットした映画250本において、主たる製作(監督、脚本、撮影など)に携わった女性は、16パーセントしかいないと言われています。さらにその250本の中で、女性が主人公の作品は、15パーセントとも言われています。男性の「妄想」によって作られた作品があまりに大多数を占めている。男性によってこの説得力の非常に強いメディアが牛耳られ、女性の発言力が奪われ、さらに男性を男性たる妄想の世界に引きずり込んでいる。もし先に挙げた250本のうち、半数以上の作品が女性によって撮られていたならば、今回の事件もまた、違った結果になったかもしれない。彼が事件を引き起こし、自らも命を絶った原因となったのは、実は映画ではなく、ほかでもなく、いわゆる男社会であると言ってしまっていいのではないでしょうか。 この事件以降、ツイッターなどで、#NotAllMen や #YesAllWomen というハッシュタグでの議論が非常に盛り上がっています。この男社会が引き起こす問題は映画だけではありません。映画好き青年が起こした事件によって始まった議論の対象は、いま日常の身近なことにまで様々に波及しています。 より多くの人がこの問題について考えるきっかけになればと思います。 則定彩香 http://ift.tt/TQspKo http://ift.tt/1tekMYs http://ift.tt/1mlrF7Y



via inside IndieTokyo http://ift.tt/1tudWyd

0 件のコメント:

コメントを投稿