2014年5月29日木曜日

[ World News #025 ] カンヌ国際映画祭、大ブーイングのライアン・ゴズリングの監督作とハリウッドスターの監督デビューについて考える チャーリー・チャップリン、クリント・イーストウッド、ロン・ハワード…彼らに共通するのは、成功した監督であるというだけではなく、俳優出身の監督だということです。彼らのように、映画界でのキャリアを俳優としてスタートし、後に監督になるという者は少なくありません。近年では、ベン・アフレック(『アルゴ』2012年)、ジョセフ・ゴードン=レヴィット(『ドン・ジョン』2013年)の活躍が記憶に新しいのではないでしょうか。 カナダ出身の俳優、ライアン・ゴズリングも、映画監督としての成功を目指した一人です。しかし、先日のカンヌ国際映画祭のある視点部門で上映された彼の監督デビュー作『Lost River』(原題)は、大ブーイングの洗礼を受けました。(#1) ゴズリングは、2004年のヒット作『君に読む物語』で、「死が二人を分かつまで」を体現したような一途な恋人を演じ、一躍トップスターの仲間入りを果たします。その後、『Half Nelson』(2006年、日本未公開)では、別れた彼女への思いを断ち切れず薬物依存症に陥る教師を演じてアカデミー賞主演男優賞ノミネート、また『ラースとその彼女』(2007年)では、リアルドールを本当の恋人のように愛する繊細な青年を演じてゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートと、人気だけでなくその実力も充分に発揮してきました。(余談ですが、ゴズリングの役は一途キャラが多いですね…。) そんなゴズリングは、カンヌ国際映画祭にもとても縁があります(逆に、ないとも言えますが)。2011年に主演を務めた『ドライブ』は、ニコラス・ウィンディング・レフン監督が監督賞を受賞し、思いを寄せる女性(人妻)を助けるためにマフィアと戦うドライバー(また一途な役どころ…)を演じた彼自身も賞賛を受けます。そして、昨年のカンヌでも、同じく主演を務めたレフン監督作『オンリー・ゴッド』がパルムドール賞を争う高い評価を受けました。しかしこの映画祭の期間中、問題の『Lost River』の撮影中だった彼は、保険会社の制約の都合で渡航許可が下りず、カンヌのレッドカーペットを歩くことができませんでした。人気絶頂のハリウッドで最もセクシーな俳優の不在は、多くのファンを落胆させました。(#2) その際、「最高の映画を作ってカンヌの地に戻ってきます」と宣言した彼のまんをじしての登場が、今年のカンヌ国際映画祭だったわけです。ところが、前述の通り、彼の監督デビュー作は酷評されました。 肝心の内容はと言うと、デトロイトのスラム街に住み、裏社会に関わりつつなんとか生計を立てるシングルマザーとその息子が、川底に異世界の街に通じる道を見つけ、暗黒の世界に足を踏み入れていく、というダーク・ファンタジーです。イギリスの新聞、The Guardianでは、作品は演出過剰であると表され、「スーパースターの成功とは、自分に対して"No"と言わない人に囲まれることでもある。もしかしたら、ライアン・ゴズリングもデヴィッド・リンチ監督やニコラス・ウィンディング・レフン監督の影響を受けた映画を撮るべきかどうか彼の周りの人たちに聞いて回ったのかもしれない」、とまで書かれてしまいました。(#3) 映画監督に転身し、成功する俳優とそうでない俳優にはどのような違いがあるのでしょうか。映画ライターのピーター・ハンソンが、コラムで興味ぶかい指摘をしています。(#4) 俳優が監督としても成功するには、まずは、彼らが俳優として築いてきたそのキャラクターに忠実な映画を撮ることだというのです。たとえば、ベン・アフレックはガス・ヴァン・サント監督の『グッドウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)で街の事情に詳しいボストンの下町の青年を演じ、監督デビュー作の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(2007年)では同じくボストンの下町を舞台にしました。確かにこのことは、チャーリー・チャップリンやオーソン・ウェルズといった映画史に残る監督たちも実践してきたことです。少なくとも最初の作品では、自分が俳優としてどのようなキャラクターを演じた時に最も輝くことができるのかを見定め、それを監督として表現することが成功の秘訣なのかもしれません。この点から考えると、『Lost River』の不評の一因は、ダーク・ファンタジーという設定が、情熱的で想い人に一途な色気たっぷりの男性(それもある意味ファンタジーだ、という点には目をつぶっておきましょう)というゴズリングのイメージからかけ離れたものであったからかもしれないですね。 配給予定だったワーナー・ブラザーズが配給を見合わせたという情報もあり、日本での公開も危ぶまれるような状態ですが、「私たちはまるで双子のように一心同体だ」というレフン監督からは「すばらしい映画だ」と賞賛されており(#5) 、実際にどのような作品にしあがっているのか気になるところです。映画の中では一途な思いをつらぬくゴズリングですが、今回のカンヌでの批評にめげず、映画監督への思いもつらぬいてほしいと思います。 Lost River - Official Trailer http://ift.tt/1hXwuBn 北島さつき #1 TIME REVIEW: Ryan Gosling’s Lost River: Crazy Like a Rat http://ift.tt/1o2B7lh #2 シネマトゥデイ ライアン・ゴズリング、カンヌ映画祭を欠席!渡航許可下りず苦渋の決断【第66回カンヌ国際映画祭】 http://ift.tt/1iuQGej #3 The Guardian Cannes review: Lost River - Ryan Gosling flounders with directorial debut http://ift.tt/1obuA5c #4 How Ben Affleck and Others Joined the Club of Successful Hollywood Actors-Turned-Directors http://ift.tt/1iuQHPj #5 Nicolas Winding Refn defends Ryan Gosling's Lost River: 'It's beautiful' http://ift.tt/1k3us8v 50 Greatest Actors Turned Directors http://ift.tt/1iuQGel



via inside IndieTokyo http://ift.tt/1k3uv4a

0 件のコメント:

コメントを投稿