2015年2月9日月曜日

[World News #161] コダックが映画フィルム供給継続を正式発表  すでにご存知の方も多いと思いますが、2月4日、コダックがハリウッドの大手スタジオ6社(20世紀フォックス、ウォルト・ディズニー、ワーナー・ブラザーズ、ユニバーサル、パラマウント、ソニー・ピクチャーズ)との間でフィルム供給に関する新たな契約を結んだことを発表しました。(#1)The Hollywood Reporterの記事によれば、この契約締結によってコダックは年間約5億ドルの費用が掛かる映画用フィルムの生産を「ビジネスとして意味をなす限り」継続することができるといいます。(#2)  そもそもなぜこの発表が大きなニュースとして扱われているかといえば、現在、大手では映画用フィルムを生産する唯一の会社となっているコダックが、近年の販売量の大幅な下落に伴いフィルム工場閉鎖に踏み切ろうとしていたからです。昨年の7月、その“フィルム絶滅の危機”に対してクエンティン・タランティーノ、J.J.エイブラムス、ジャド・アパトー、クリストファー・ノーランといった映画監督らが大手スタジオと交渉し、コダックがフィルム生産の継続を決定したことが大きな話題になっていました(この時のニュースは以前IndieTokyoでも内山ありささんが取り上げています)。(#3)  今回の正式合意に際してコダックが出したリリースでも、同社のエンターテイメント&コマーシャル部門代表のアンドリュー・エヴェンスキ氏の以下のような声明が掲載され、映画の作り手たちがフィルムを必要としていることが強調されています。 「私たちはフィルムメーカーたちにフィルムの価値が何にあるのかを訊ねてきました。彼らの答えは、特別な奥深さや独特な粒子などさまざまなものがありましたが、圧倒的に多かった答えが“物語”です。彼らは自分たちの物語を自分が思い描いたように語るためにフィルムを必要としています。そしてフィルムが視覚的言語において欠かせないものであり続けることを切望しています。フィルムの使用は彼らが映画史の一部となる作品を作るための手助けとなるでしょう」(#1)  そしてその発言を裏付けるかのように、『6才のボクが、大人になるまで。』『グランド・ブタペスト・ホテル』『イミテーション・ゲーム』『インターステラー』『フォックスキャッチャー』など今年度のアカデミー賞にノミネートされている多数の作品、あるいは『スター・ウォーズ Ⅶ』や『ミッション:インポッシブル5』『バットマンVS スーパーマン』など現在製作中の話題作がフィルムで撮影されていることも記されていました。  が、私たちが今回のニュースを歓迎しながらも忘れてはならないのは、現在において上に挙げたようなフィルムで撮影される作品はあくまでも例外的なものであるということでしょう。先月FILMMAKERに掲載された記事によれば、2014年に全米公開された映画の中で35mmフィルムで撮影された作品はわずか39本しかなかったそうで(#4)、つまり少なくともアメリカにおいてはもはや大多数の作品がデジタル撮影で作られているのが事実。そして、そのわずか39本の作品の中でアカデミー賞にノミネートされた作品が占める割合の大きさを考えると、例外的な方法で撮影された作品がメインストリームを作っている、言い換えれば名の知れた監督でなければフィルムで撮影することが許されなくなっている現状――ある種、ジョージ・ルーカスが巨額の予算のもと『スター・ウォーズ エピソード2』をハイビジョンで撮影した15年前とは逆転した状況が生まれているように思えます。  QUATZというアメリカのビジネスニュースサイトでは、今回のコダックの発表を受けて「ハリウッドは何故デジタル開拓の後にフィルムを救おうとしているのか?」と題した記事が掲載されました。その記事は、現在もフィルムで撮影をするタランティーノやノーラン、スピルバーグのことに触れた上で、以下のように結ばれています。 「もちろん予算のないフィルムメーカーにとっては、フィルムで撮影して現像するとずっと費用がかかってしまう。これがインディーズ監督たちの多くがデジタル時代を受け入れている理由だ。サンダンス(映画祭)では全てをiPhone5Sで撮影した映画(”Tangerine”)まで登場した。彼らはもう後戻りはできない。しかし、世界最高のフィルムメーカーの何人かはコダックの契約によって引き続き選択の余地を残すことができた――せめてほんのわずかな間でも」(#5)  そう、私たちはもう後戻りはできないのです。2月6日にVarietyに掲載された記事(#6)によれば、2014年の段階で全世界の89.8%の映画館のスクリーンがデジタル上映設備に移行したそうです。さらにコダックの契約締結のニュースが流れた4日には、米大手ストリーミングサービスのNetflixが今秋ついに日本にも上陸することが明らかになりました。私たち観客を取り囲む上映環境、視聴環境は、すでにフィルムを必要としない環境に変化しています。その中で、フィルムが一握りのフィルムメーカーのみが使用できる贅沢品としてではなく、多くの人に開かれた選択肢として生き延びるためには、さらなる技術開発、そしてフィルムを存続させようとするより強い意志が必要になってくるのではないでしょうか。 黒岩幹子 #1 http://ift.tt/16q7HXA #2 http://ift.tt/1zBkX5R #3 http://ift.tt/1za6rPU #4 http://ift.tt/1zzshjx #5 http://ift.tt/1v8cinl #6 http://ift.tt/1C1dhYR

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